だから十条仲通り商店街で店をやるようになってから猫の多さに驚いた。
店内から外にふと目をやると、生まれたばかりの可愛い子猫が走り回っていて癒されるようになった。
そんなある日、猫と言う不思議な生き物を初めて強く意識した出来事が有った。
店の営業が終わった帰り道、横に入る路地の入口でベージュで顔の真ん中だけが黒い子猫が人が置いて行ったカップに入った納豆を美味しそうに食べていた。
ポインテッドと呼ばれる猫で、その変わった顔立ちもさることながら、猫が納豆を食べていると言う不思議な光景につい女房と二人でしゃがみこんで眺めていた。その時、すぐ隣にいた兄弟と思える魔女の宅急便 のジジそっくりの黒い子猫がその場を離れた。
ジジはすぐに母猫を連れて戻って来た。母猫は相変わらず納豆を食べているポインテッドの周りをぐるりと1周した後、私達の顔をゆっくっりと睨んだ。その顔はまるで「私の子供だからね!」と訴えているようだった。
兄弟のポインテッドが人間に囲まれていて危ないと思ったジジが、母猫に「お母さん、兄弟が人間の傍で危ないよ。助けなきゃ。」と知らせて母猫がやって来たのは明らかである。
だがこの間猫の鳴き声は全く聞こえなかった。猫はしゃべらなくてもテレパシーで通じ合えるのだろうか?
この事が猫に本気で興味を抱くきっかけとなった。